この記事では、イベント主題企業「SHIN4NY(シンフォニー)株式会社」と当社FUJIOHにおける「イベントの盛り上がりを可視化」という課題への共創実証について紹介します。
※本文中では社名は敬称略で記載しています。
オンラインとリアルの“熱狂の断絶”をどう埋めるか?

e-Sportsをはじめとするハイブリッドイベントが増える中、リアル会場とオンライン視聴者の間に横たわる会場の盛り上がりとオンライン先の盛り上がりや空気感の落差、すなわち“熱狂の断絶”は、イベント主催者にとって大きな課題となっています。
会場の盛り上がりがオンラインに伝わらない。逆に、オンラインで熱狂している観客の反応が会場に届かない。そんなジレンマを解決出来れば、世の中のオンラインイベントに対してワクワクがもっと拡大出来るのでは?と考えていたのが、イベント主催企業「SHIN4NY」でした。
この課題の本質は、“空気感”という目に見えない感情の共有にあります。
視覚や聴覚といった従来の情報伝達手段では、熱狂や高揚といった感情の機微を完全に伝えることはできません。だからこそ、SHIN4NYは「熱狂を数値で可視化する」ことに挑戦しようとしていました。
この実証試験は、FUJIOHとのオープンイノベーション活動から生まれました。
FUJIOHが「空気の価値」をテーマに、人の感情や情動を心拍変動で測定する研究を進めていたことがきっかけで、SHIN4NYから声がかかりました。

空気と心拍で、熱狂を“測る”という挑戦

SHIN4NYは「熱狂が高まると、音声内の特定周波数帯が強くなる」という仮説を持っていました。
一方、FUJIOHは「人が熱狂すると活動量が増え、呼気に含まれるCO₂濃度が上昇する」「交感神経が優位になり、心拍変動指数(LF/HF)が上昇する」という仮説を立てていました。
この2つの仮説を融合し、リアルイベントの“熱狂”を空気と心拍で可視化するという、前例のないPoC(概念実証)プロジェクトが始動したのです。
実況者の“熱狂”をリアルタイムで可視化

実証試験は、実際のe-Sportsイベントの現場で行われました。SHIN4NYとFUJIOHがそれぞれの技術を持ち寄り、以下の3つのアプローチで熱狂度を測定しました。
- 音声解析(SHIN4NY)
- CO₂濃度測定(FUJIOH)
- 心拍変動解析(FUJIOH)
この取り組みでは、センサーの外観をイベントの雰囲気に合わせる工夫や、発汗による心拍データのノイズ除去といった現場ならではの課題も発生しましたが、それらを乗り越えて得られた成果は大きなものでした。
盛り上がりのピーク時には、交感神経活動指標の平均値が約20倍、CO₂濃度の平均値が約10倍に上昇。まさに“熱狂”が数値として現れた瞬間でした。
空気を測ることで、感情をつなぐ未来へ

この実証試験は、単なる技術検証にとどまりません。リアルとオンラインの境界を越えて、感情を共有する新たな手段を提示した点において、大きな意義を持っています。
SHIN4NYからは「狙った通りのデータが得られた」との評価をいただき、今後のイベント設計や演出に向けた新たなヒントが得られました。
また、FUJIOHとしても、センサー設計やデータ解析における知見を蓄積できたことは、今後の製品開発や新市場創出に向けた大きな一歩となりました。
“空気を測る”というアプローチが、感情をつなぎ、体験を深化させる。
FUJIOHはこれからも、見えない価値を見える化する挑戦を続けていきます。
本取り組みの詳細をまとめたホワイトペーパーをダウンロードいただけます。
是非ご活用ください。