飲食店を開業するには?必要な資金・資格・設備、手続きの流れを解説

飲食店を開業する際に行なうことは、資金の調達や必要な資格の取得、設備の用意、行政手続きなど多岐にわたります。「何から手をつければよいのか?」と不安に感じる方も多いでしょう。

本記事では、開業に必要な資金や設備の調達方法から、資格の取得方法、必要な手続きの流れまでわかりやすく解説します。基本的なポイントを押さえてスムーズな開業準備につなげましょう。

目次

飲食店を開業するために必要な資金・設備

飲食店を始めるには店舗の物件費用、設備費、広告宣伝費など、さまざまな費用が必要です。調査によれば、飲食店・宿泊業の開業費用は平均883万円でした(『新規開業白書2023年版』(日本政策金融公庫総合研究所)より)。

具体的にどのような費用がかかるのか、おもな内容を見ていきましょう。

物件取得費

店舗となる物件を取得するために必要な費用です。物件は賃貸する場合、取得(購入)する場合で必要な費用が異なります。ここでは物件を賃貸する場合を見てみましょう。

敷金・礼金・保証金

物件を借りる際に物件所有者(オーナー)に支払う費用。事業用として物件を借りる際には、敷金や保証金として家賃の3〜6ヵ月分が設定されているケースが多いです。

仲介手数料

物件を借りる際に不動産会社に支払う手数料。上限が家賃の1ヵ月分と定められており、0.5〜1ヶ月分が一般的です。事業用の場合、消費税がかかります。

前家賃

契約時に必要な家賃の前払い分。1ヵ月分を先に支払うことが一般的ですが、事業用物件の場合、数ヵ月分の前家賃が設定されている場合もあります。

保証料

保証会社を利用する場合に必要な費用です。物件を借りるにあたって保証会社による審査と保証会社経由の家賃支払いを求められることが一般的です。初回の保証料相場は月額家賃の0.5〜1ヵ月分。さらに月額保証料が1〜2万円程度かかります。

厨房機器費

開業したい業態によって厨房機器は異なります。内装工事によって物件に備え付けるものと、運び入れて設置するものとに大別されます。工事が必要な設備は入れ替えが難しく、費用もかさむため、必要な設備についてはあらかじめ明確にしておく必要があります。

ガス設備・電気設備

ガス管のサイズによって使用できる設備が異なるため、業態によって必要とするガス管のサイズを決めておきます。もし変更する場合、工事費用が必要になることがあります。電気設備は必要な電力量によって契約が変わります。特に大きな電力を必要とするエアコンや食洗機を設置する場合は、一般的な電灯(照明や小型機器を使うための電力契約)ではなく動力(業務用機器を使うための電力契約で三相200Vなど)を引き込む必要があります。

排水設備・排気設備

給排水ともに飲食業に適した径の給排水管が必要です。特に排水については油を多く使う飲食業態の場合、油を受け止めるグリーストラップの形状や容量も特別なものが必要になります。物件によって工事の可否や工事費用が変わります。

排気については、空調調理場の煙の排気消防法で規定された排煙設備が必要となります。これも業態によって煙の量やニオイなどの対策、調理場と客席のレイアウトによって空調機器の設置計画が変わります。物件内のダクト工事費用や、場合によっては建物の外への排気口の設置工事費用が必要となります。

調理用設備、冷蔵庫、食洗機など

調理用設備の基本は、シンク(流し)手洗いコンロ調理台冷蔵庫などです。飲食店の場合、シンクは2槽のものが必要となります。シンクとは別に手洗い器も必要です。コンロは必要な火力に応じたものが必要となります。業態によってはオーブンフライヤーなどを用意する場合もあります。また、冷蔵庫冷凍庫製氷機も必要なサイズのものを設置します。その他、業務用食洗機専門調理器具など、業態や店のスタイルによって必要な設備が変わります。

設備をそろえる際には、購入だけでなく、リースの利用も選択肢です。リースを利用することでイニシャルコストを抑えられるメリットがありますが、一方で契約期間に縛りがあるなどのデメリットも存在します。設備は新品に限らず中古でそろえることも可能です。

必要な設備をそろえるためにどのくらいの費用がかかるのか見積りを取るなどで事前に把握しておくとよいでしょう。

内外装工事費

店舗のコンセプトに合わせた内外装工事が必要となります。

店舗内装工事

内装工事にはガス・電気・給排水・給排気といった設備に応じた物件工事と、床、壁、天井など美観にかかわる内装工事があります。物件工事については必要な工事がどれだけあるか、美観工事についてはどのくらいこだわるかによって費用が変わります。また、業態や店内の場所によっては、不燃処理防火認定素材の使用が義務付けられる場合があります。特に厨房や調理スペースなど火を扱う場所では、防火性能を備えた素材を使用することが重要です。

店舗外装工事

外装工事はおもに看板や壁などの装飾で、店舗の印象づけるものです。看板については夜も目立つような照明の設置など、電気工事がともなう場合があります。また古い物件の場合は外壁の補修工事などが必要な場合があります。建物自体にかかわる部分はオーナー負担となる場合が多いですが、物件によって応相談となります。

備品費用

家具、食器、調理器具といった道具をそろえる必要があります。

家具

客席用のテーブル、イスを用意します。家具として用意する場合や、カウンター、ボックス席など内装工事とともに設置する場合があります。客席のほかに、例えば物販も行なうのであれば専用の棚なども設置計画をしておきたいところです。

食器

皿などの食器、グラスやコップ、ナイフ、フォーク、箸などカトラリーを用意します。提供する飲食物によって、また店舗のコンセプトによってどのような食器類がどのくらい必要かを考えておきましょう。食器類を収納する棚は厨房・客室側それぞれに必要なスペースを確保しておきましょう。

調理器具

鍋、フライパン類、包丁、おたまなどの調理器具もそろえる必要があります。これも業態によって異なります。また調理器具についても厨房内に保管場所を確保しておきましょう。

居抜き物件の活用

同じ業種・業態であれば、居抜き物件の選択は費用を抑える手段として有効です。居抜き物件とは、前の店舗が使用していた設備や内装がそのまま残っている物件のことで、厨房設備やカウンター、内装工事済みの状態で利用できることが多いため、初期投資を大幅に削減できます。特に、同じ業態であれば必要な設備機器がほぼそろっているため、導入する設備や工事の手間を最小限に抑えられるのがメリットです。

広告宣伝費

多くの人に店舗を知ってもらうには、まず自分からの情報発信手段として、ホームページ制作、情報サイトへの掲載、SNSなどの運用、ポスターやショップカードの制作などを行ないます。それぞれ制作会社やデザイナーに依頼し制作するための費用が必要となります。 最近ではホームページ制作の知識がなくてもブラウザ上で簡単にホームページが作成できるサービスもあります。

また、Googleマップなど地図情報に店舗の情報を掲載することは無料で実施できる施策です。ほかにもSNSはフォロワー数を増やすことで宣伝にも活用できます。こうした作業の代行業者もいますが、なかには相場以上の価格を提示したり、高額な初期費用の分割や割高な維持管理費を長期契約で組まされたりする悪徳なケースもあるので注意しましょう。

チラシの配布、新聞や地元メディアへの出稿など有料での集客を行なう場合、広告宣伝費用がかかります。チラシ、タウン誌、新聞など、掲載業態によって費用も異なります。飲食店の広告宣伝費は売上の5%ほどが相場と言われています。開店時やイベント時などはチラシやSNS広告での告知を多めに出稿することもありますが、その場合でも売上の10%程度に抑えると安心です。

特にSNS広告では月額の予算を決めたうえで、広告を表示させたいターゲットのエリアや年代などを絞って広告表示を設定できるので、予算に応じて調整がしやすいです。

事業経営にかかる費用

そのほか、事業を行なううえでの手続きなどの費用がかかります。

法人設立に向けた費用

法人の場合、法人設立に向けた定款の承認、登記費用などが必要です。設立は行政書士や司法書士など専門家に依頼する場合、費用がかかります。また法人登録には登録免許税がかかります。法人設立にはおおむね15〜25万円くらいが必要です。

飲食店営業許可の取得

飲食店を開業する際、保健所の営業許可が必要です。地域によって営業許可手数料が異なりますが、飲食店営業であれば 1.5万円〜2万円程度かかります。

各種保険料、採用費、会費など

そのほか、火災保険、賠償責任保険などの保険料、地域の飲食業組合、町内会費用、システム利用料など、店舗を運営するうえで必要な費用や、スタッフを採用する際の採用サイト広告掲載料などが必要です。

また直接どこかに支払うものではありませんが、開業してから営業が軌道に乗るまでの運転資金を用意しておく必要があります。一般的に運転資金は必要なコストの6ヵ月分以上の現金を用意しておきます。

原状回復の費用

店舗を閉店・退店する際には、原状回復のための費用が必要です。特に、内装工事で物件に備え付けた設備や装飾品については、残置が認められず、すべて取り外し、元の状態に戻す必要があります。これには、壁や床、天井に施された内装、厨房機器や照明設備などが含まれます。物件の賃貸契約に基づき、原状回復費用は店舗運営者が負担するのが一般的です。費用は工事の規模や内容によって異なりますが、退店時に発生する大きなコストの一つです。

開業資金を調達する方法

飲食店を開業する際、資金の確保は事業の成否に直結する重要なポイントです。どのように資金を調達するかによって開業後の運営にも影響してくるため、適切な方法で計画的に進める必要があります。

自己資金+金融機関の融資

飲食店を開業する際は、自己資金と金融機関からの融資を組み合わせて資金を調達する方法がオーソドックスです。

一般的に自己資金は全体の3割程度が目安で、小規模な店舗であれば数百万円、中規模以上の店舗では1,000万円前後を目安に用意するケースが多いです。自己資金の割合が多いほど、金融機関は融資の安全性を評価しやすくなり、審査に通りやすくなります。

また、自己資金が多ければそれだけ融資額を抑えられるため、開業後の返済負担も軽減されます。事業計画を作成する際には、自己資金の額に応じて融資の必要額や返済計画を慎重に検討しましょう。

日本政策金融公庫の融資

政府系金融機関である日本政策金融公庫の融資を活用して開業資金を調達する方法もあります。日本政策金融公庫の融資は低金利で、担保・保証人も原則不要である点が特徴で、新規開業者や小規模事業者にとって利用しやすい制度です。

融資限度額は最大7,200万円で、運転資金は4,800万円までです。返済期間も比較的長めに設定されているため、返済の負担を抑えながら必要な資金を確保でき、開業後の資金繰りにも余裕を持たせられます。

補助金・助成金の活用

国や自治体が提供する補助金・助成金を活用するのも有効です。飲食店の開業では、地方創生企業支援事業(東京圏以外)、小規模事業者持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金(会計ソフトやPOSレジ導入に適用)などを活用できます。

補助金・助成金は申請に際して事業計画書や資金計画書の提出が必要で、計画的に準備を進めることが重要です。また、補助対象や申請スケジュールは制度ごとに異なるため、事前に情報収集を行ない、自身の開業計画に合った支援策を選びましょう。

クラウドファンディング

近年では、クラウドファンディングを活用して飲食店の開業資金を集めるケースも増えています。

クラウドファンディングとは、インターネット上で支援者から資金を募り、目標金額や支援者へのリターンを設定することで資金調達する方法です。例えば、限定メニューの提供や優先予約権など支援者にとって魅力のあるリターンを用意し、参加・協力を促します。

クラウドファンディングによる資金調達は、開業前からファンを獲得でき、店舗の認知度向上集客の下地作りにもつながる点が大きなメリットです。計画的に企画や広報を行なえば、資金調達と集客準備を同時に進めることができます。

飲食店を開業するのに必要な資格

飲食店を開業する際は、店舗の安全性や適正な衛生管理状態を確保するために法律で定められた資格を取得しておく必要があります。スムーズに営業を開始できるよう、開業前に忘れずにスケジュールしておきましょう。

食品衛生責任者

食品衛生責任者は、飲食店における食品の安全管理や衛生面の監督を担う資格です。開業するすべての店舗に少なくとも1名設置することが法律で義務付けられています。必ずしも調理を担当する者である必要はなく、高校生を除いて17歳以上であれば取得可能です。

資格の取得には、各都道府県の食品衛生協会が実施する約6時間の講習を受ける必要があります。費用は12,000円です。営業許可申請時に修了証の提示を求められるため、開業準備の初期段階で取得しておきましょう

防火管理者

防火管理者は、飲食店など多数の人が利用する施設で火災を防ぎ、安全を確保するための責任者です。収容人員が30人以上(従業員を含む)の店舗では、必ず選任しなければなりません。

防火管理者資格には店舗の規模や用途に応じて「甲種」と「乙種」の2種類があり、それぞれ防火管理者講習を受講して必要な知識と技能を習得する必要があります。

講習は甲種が2日間、乙種が1日です。修了証の取得後に消防署へ選任届を提出する流れとなります。内装工事と並行して早めに受講しておくと開業手続きが滞りません。

飲食店開業の基本ステップ

飲食店を開業するには、定められた許認可を受ける必要があります。また開業にあたって費用を金融機関から借り入れする場合、そのための準備が必要です。

STEP 1:事業計画と融資相談

前述したように、飲食店開業の資金調達方法はさまざまです。自己資金で賄うことももちろんありますが、開業に必要な費用を全額自前で用意するケースは稀で、多くの場合は金融機関から借り入れを行ないます。その際に必要となるのは事業計画書です。事業計画書をもとに地元の金融機関に融資相談を行ないます。金融機関では、店舗の規模や業態によってどのくらいの金額の融資を行なうか、過去の事例にならったおおよその目安があります。

STEP 2:物件の取得

賃貸で物件を借りる場合、不動産会社を利用して物件を探します。物件は立地や広さだけではなく、必要な厨房設備が備えられるか、保健所の営業許可が取れるのかを確認します。業態によって必要となる給排水管のサイズ、ガス・電力量、排気計画などが異なるため、それに合った物件かどうかを判断しなければなりません。

業種・業態によってはオーナーから許可が得られない場合もあります。例えば、いかがわしいお店、動物の飼育が発生する店舗、行列ができやすく近隣に迷惑がかかる可能性がある店舗では、オーナーが物件の利用を許可しないことがあるため、事前に確認が必要です。

また、工事をともなう場合もあるので、店舗作りに詳しい厨房機器専門業者店舗工事業者に事前に必要な設備を確認しておくとよいでしょう。あるいは一緒に物件の確認をして工事費用の目安を聞くことも有効です。

STEP 3:食品衛生責任者の資格取得

さきほどお伝えしたとおり、飲食店には食品衛生責任者を設置しなければならないため、資格取得が必要です。行う食品衛生責任者講習は1日で完了するためハードルは高くありませんが、事前の申し込みが必要となります。地域によっては開催回数が少なく、申し込み枠がすぐに埋まってしまう場合があるので、早めに取得しておきましょう。

なお、栄養士、調理師など特定の資格を持っていれば、食品衛生責任者講習の受講が免除されます。食品関係の資格を持っている場合は、該当するかどうか確認しておきましょう。

STEP 4:飲食店営業許可の取得

飲食店営業を行なうにあたっては保健所による営業許可を受ける必要があります。許可を受けるには、定められた設備が設置されているか、厨房や店舗の作り・仕様が基準に則っているか、客席の作りが基準に則っているかなどを現地で担当者が確認を行ないます。

内装工事などを行なう場合、希望の業態の許認可が取れる工事内容なのか、図面の段階で保健所に確認しておくと安心です。また、例えば飲食提供だけでなく、お菓子やパンなど作ったものを販売したい場合は、別途それにあった許認可を取得する必要があります。

その他の手続き

不特定の人数が出入りする施設を開業する場合、消防署への届出が必要となります。またビルのテナントとして入居する場合などは、防火管理者の選任が必要となる場合もあります。24時以降におもに酒類を提供する店舗の場合、警察署に「深夜酒類提供飲食店営業開始届」の提出が必要です。

また、従業員がいる場合は社会保険・労働保険への加入が義務付けられています。労働基準監督署で手続きを行ないます。経営にあたり、特に法人の決算や個人の場合の確定申告などは専門知識が必要となるため、税理士と顧問契約を行なうケースが多いです。

まとめ

飲食業の開業には、資金や設備の調達といった金銭的なコストに加え、資格取得や許認可の手続きなど時間的なコストもかかります。詳細は業態やコンセプトによっても異なるため、自分の開業したい業態に合った基準や手続きなどを把握しておくことが重要です。

開業後もスムーズに店舗運営をスタートできるように、事前準備をしっかり行ない、計画的に進めましょう。

この記事の監修者プロフィール

FUJIOH 業務用事業ソリューション推進担当 藤野 修一
飲食店・宿泊施設・食品小売など、業務厨房に関する課題解決に従事。排気・給気の設計から、循環タイプ機器の導入提案、さらに省エネや作業効率向上を目的としたレイアウト改善まで、現場に即したソリューションを提供してきた実績を持つ。メーカーや設計事務所、施工会社との協業を通じ、店舗の新規立ち上げから改修までを幅広くサポート。現在は、業務用厨房における「新しい厨房のカタチ」をテーマに、課題解決型の提案活動に取り組んでいる。

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