利益を最大化する飲食店の売上管理とコストコントロール術

飲食店の売上がどれほど伸びても、コストがかさむと手元に残る利益はごくわずかになってしまいます。その問題を解決する鍵が「売上 − コスト = 利益」という考え方です。

本記事では、客数・客単価・回転率の3要素を軸に、初心者が取り組みやすい売上管理とコスト削減の方法を詳しく解説します。また、売上アップ施策とコストカット施策も合わせて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

利益確保が重要な理由

どれだけ売上が上がっていても、出ていくコストが多ければ最終的に手元に残るお金は少なくなってしまいます。そこで大切なのが、利益の確保を意識してコストと売上をバランスよく管理することです。

「売上 - コスト = 利益」の基本式

飲食店を運営するうえで、まず知っておきたいのが「売上 - コスト = 利益」というシンプルな計算式です。

  • 売上:お客様がお店で支払った金額の合計
  • コスト:食材や人件費、家賃や光熱費など、お店を運営するためにかかる費用
  • 利益:売上からコストを差し引いた、最終的に手元に残るお金

この式を理解しておくと、たとえば「売上が多くても、コストがさらに多ければ手元には何も残らない」「売上がそれほど高くなくても、コストをうまく抑えれば利益を確保できる」といった考え方が自然と身につきます。

利益をしっかり出せるようになると、メニュー開発やスタッフの教育、設備の更新など、今後の成長につながる投資ができるようになるのも大きなメリットです。

飲食店の経営が厳しくなる背景(競合・人手不足・原材料高騰 など)

しかし、近年の飲食業界は以前にも増して厳しい環境にあります。店舗数が増えて競合が激化しているため、価格競争が起きやすく、利益を得にくくなっています。また、人手不足でスタッフの確保が難しくなり、人件費が高騰しやすい状況です。さらに、食材や原材料の仕入れ価格も上がっているため、コスト面での負担が大きくなっています。

こうした状況だからこそ、「売上をどう伸ばすか」に加えて「コストをどう抑えるか」という視点が不可欠です。たとえば、仕入れ先やメニューを見直して原価を下げたり、シフト管理を改善して人件費を適切にコントロールしたりすることで、お店を安定的に続けられる可能性が高まります。

厳しい環境でも生き残り、成長するためには、日々の経営判断を「売上 - コスト = 利益」の考え方に基づいて行い、数字を把握しながら柔軟に対策を立てることが大切です。

飲食店売上の基本

飲食店の売上を伸ばすためには、「客数」「客単価」「回転率」という3つの指標をしっかりと把握しておく必要があります。これらの数字を意識しながら経営することで、どの部分を改善すべきかが明確になり、結果として売上アップにつながります。ここでは、それぞれの要素の意味や注目すべきポイントを解説し、具体的な売上管理の方法や最初の一歩となる考え方についてご紹介します。

客数・客単価・回転率の3要素を把握しよう


飲食店の売上は以下の3つの要素の掛け算といっても過言ではありません。

  • 客数:お店に来店するお客様の総数
  • 客単価:お客様1人あたりの平均利用金額
  • 回転率:同じテーブルが1日に何回使われるか(入れ替わり回数)

この3要素をまず数字で捉え、「どこが弱いのか」「どこを伸ばせるのか」を考えることがスタートラインとなります。

客数(何人来店しているか)

客数は、「今日お店に何人のお客様が来たか」を表す最も基本的な指標です。飲食店の場合、曜日や天候、イベントの有無などで客数は大きく変動します。

チェックポイント

  • 曜日別の来店人数はどう変わるか
  • 時間帯ごとのピークとオフピークは何時か
  • 集客が少ない日は何が原因か(告知不足、メニュー構成など)

対策としては、SNSでの告知やクーポン配布などで認知度を高めたり、混雑の予想される曜日に特別メニューを用意したりして、お客様の足を引きつける工夫が有効です。

客単価(1人あたりがいくら使うか)

客単価は、お客様1人あたりが平均でいくら使っているかを示す数字です。たとえば、単価1,000円×お客様100人 = 10万円の売上、単価2,000円×お客様100人 = 20万円の売上というように、単価が上がるだけで大きく売上が変わります。

チェックポイント

  • 人気メニューの原価率と価格が適切か
  • 単価の低い商品ばかり注文されていないか
  • セットメニューや追加オーダーなどの提案ができているか

ドリンクやデザート、サイドメニューを上手におすすめしたり、セットメニューを充実させることで、客単価を上げる施策を打ちやすくなります。

回転率(テーブルの入れ替わり回数)

限られた席数でも、1日で何回転もさせることができれば、売上を増やすことが可能になります。

チェックポイント

  • テーブルやカウンターの配置は効率的か
  • オーダーから提供までに時間がかかりすぎていないか
  • 会計・レジ対応に時間を取られていないか

提供スピードや接客オペレーションの改善、会計システムの導入などにより、回転率を高めることができます。ただし、あまりにも急かしすぎると接客レベルが下がり、お客様の満足度を損なう恐れがあるため、バランスが大切です。

具体的な売上管理のポイント

売上管理のタイミングも1つではありません。いくつかのチェックポイントを設けて比較することで対策が立てやすくなります。

チェックポイント

  • 日次:毎日の売上と客数・客単価を把握し、ピークタイムや客足の弱い日の変動を即座に確認する。
  • 週次:1週間単位で売上を集計し、曜日別の傾向を分析する。例えば「水曜日がいつも低い」「金曜日は団体客が多い」などのパターンを掴む。
  • 月次:1ヶ月を通しての合計売上や平均値を分析し、季節要因やイベントの影響を振り返って改善策を立てる。

売上データを日・週・月の単位で見比べることで、客数や客単価、回転率の変動要因を捉えやすくなります。

初心者でも始めやすい管理手段

売上管理の方法も様々です。日々のデータを管理・分析しやすい方法が望ましいです。

  • POSレジ:リアルタイムで売上や在庫を管理でき、商品ごとの売れ筋を簡単に把握できる。最初は安価なサブスク型から始める選択肢もある。
  • エクセル・スプレッドシート:ソフトを使い慣れていない方でも、売上の合計や客数・客単価を表やグラフでまとめやすい。無料で使えるGoogleスプレッドシートも便利。
  • 手書きノート:ITが苦手な方でも気軽に始められ、最低限の出費で管理できる。ただし、長期的なデータ集計や分析には少し時間がかかるため、シンプルな表計算ツールへの移行も検討すると良い。

「どうすれば客数や客単価を増やせるか?」と考える習慣づくり

売上を伸ばすためには、単に「もっと売上を上げたい」と思うだけでなく、具体的に「客数を増やすための施策」と「客単価を上げるための施策」を考える習慣が大切です。

たとえば、SNSやクーポン、地域のイベントとのコラボなどで集客を強化しつつ、おすすめメニューやセットメニューの提案で客単価を高める工夫を行います。

また、回転率に関しても、オペレーションの改善や提供スピードの向上がどれだけ売上に影響しているかを意識しながら、日々の営業を振り返ってみましょう。こうした小さな取り組みを積み重ねていくことで、お店の売上構造をしっかりと理解し、利益につながる経営が可能になります。

飲食店コストの基本

飲食店の経営を安定させるうえで、コスト管理は欠かせない要素です。売上をしっかり上げるだけでなく、かかる費用を適切に抑えることで、最終的に手元に残る利益を最大化することができます。ここでは、まずコストを構成する3つの主要要素を整理し、初心者が押さえておくべきポイントや具体的な失敗例・対策を解説します。

コスト管理の3大要素

飲食店におけるコストは、大まかに以下の3つに分けることができます。どれも経営に大きく影響する部分なので、まずはそれぞれの特徴や注意点を知っておきましょう。

原価(食材など)

  • 食材やドリンクなど、実際にお客様に提供する商品の材料費にあたります。
  • 仕入れ先や仕入れ量、季節変動による価格差などが大きく影響するため、こまめな調整が重要です。

人件費(スタッフの給料やシフト管理)

  • アルバイトや正社員の給料、社会保険料、福利厚生費などが含まれます。
  • シフトの組み方やスタッフの人数によって変動しやすく、飲食店のなかでも大きな負担になりがちなコストです。

その他の固定費・変動費(家賃・光熱費など)

  • 毎月かかる家賃やリース料金、電気・ガス・水道代などの光熱費も無視できないコスト要因です。
  • 店舗の規模や立地、設備の状態などによっても変動し、長期的な視点で見直しが必要になる場合があります。

コスト管理は奥が深い分野ですが、最初から難しいことをすべて理解しようとする必要はありません。

まずは「自分の店舗がどのくらいのコストを使っているのか」正確に把握することが大切です。ここでは、特に注目してほしいポイントを3つにまとめています。日々の営業を振り返りつつ、少しずつ改善していくことで、大きな成果につなげましょう。

原価率と人件費比率の計算方法

原価率の計算式

原価率=食材費用​/売上​×100(%)

たとえば、月の売上が100万円で、仕入れに30万円かかっている場合、原価率は30%になります。

人件費率の計算式

人件費率=人件費/売上​×100(%)

同様に、100万円の売上に対し、人件費が20万円であれば、20%となります。

これらの数字を出しておくと、「食材に予想以上のお金がかかっていないか」「人件費を抑えるためのシフト工夫ができないか」など、具体的な対策を考える材料が得られます。

在庫ロス・フードロスを減らすための簡単な仕組みづくり

仕入れた食材が無駄になると、売上につながらないコストが増えてしまいます。廃棄食材を減らし、適切な在庫管理をするだけでも原価率の改善につながります。

仕入れ量と販売量をこまめにチェック

過去の実績や当日の予約数、天候・イベント情報などを考慮し、必要な量だけ仕入れるようにします。

賞味期限切れを減らす

冷蔵庫内の配置を決めておき、消費期限が近いものから優先して使うなど、“先入れ先出し”のルールを徹底し、材料の賞味期限切れによるロスを減らします。

簡易的な在庫管理表やアプリの活用

エクセルやアプリを使って在庫量や使用量を記録し、スタッフ全員がいつでも確認できる環境を整えましょう。データで管理することで、「どの商品がどれくらい売れているか」「廃棄が多い食材はどれか」をすぐに把握できます。

シフト作成時の売上予測や、ピーク・オフピークの人員配置

人件費は飲食店における大きなコストの一つです。シフトを作成する際に、曜日や時間帯ごとの売上予測を立てることで、必要な人数を適切に配置できるようになります。

来客数の予測にもとづくシフト組み

たとえば、週末は予約が多く忙しいが、平日昼間は客数が少ないなど、過去データからおおよその見込みを立てます。ピーク時には十分な人数を確保し、オフピーク時には最低限の人数だけで回す工夫が必要です。

スタッフ全員のスキルアップを図る

接客・厨房・洗い場など、複数のポジションをこなせるようにしておけば、急な欠員や混雑にも対応しやすくなり、人件費の効率化にもつながります。

コスト管理は、地道に数字を追いかけることで見えてくる課題が多い分野です。最初は面倒に感じるかもしれませんが、原価率や人件費率などの基本的な指標を毎月チェックし、在庫やシフトを細かく管理する習慣をつけるだけでも、目に見えてコストが改善されるケースは多々あります。

小さな積み重ねが大きな成果につながるので、まずは一歩ずつ取り組んでみましょう。

初めてでも実践しやすい売上アップ&コスト削減アイデア

店員・店舗

飲食店の経営を軌道に乗せるためには、売上を伸ばすだけではなく、コストを効率よく削減して最終的な利益を高めることが不可欠です。しかし、具体的に何から始めればいいのかわからない、という声も多いでしょう。

ここでは、すぐに取り組みやすいアイデアを「売上アップ編」と「コスト削減編」に分けて詳しく紹介します。今すぐできる小さな工夫でも、積み重ねることで大きな成果につながる可能性があります。ぜひ参考にしてみてください。

売上アップ編〜メニューの工夫

人気メニューの重要性

お客様が「これが食べたい」と来店のきっかけになる看板商品は、客数を増やすのに大きく貢献します。人気メニューを前面に出すと同時に、注文しやすい位置(メニュー表の目立つ場所や店頭POPなど)に配置しましょう。

セットメニューの魅力

メインディッシュ+サイドメニュー+ドリンクなどをセット価格で提供すると、お客様は「お得感」を感じながら注文しやすくなります。一方、お店側は単品よりも客単価を上げやすいというメリットがあります。

コースメニューでのまとめ買い効果

宴会やパーティーなど、グループ利用を想定したコースメニューを充実させることで、一度に大きな売上を確保しやすくなります。価格設定は過度に高くしすぎないように留意し、内容の充実感と価格のバランスを意識することが大切です。

売上アップ編〜接客・サービスの質向上

スタッフ間で統一した「おすすめフレーズ」を用意

たとえば、「当店一番人気のこちらもいかがですか?」など、訴求のためのおすすめフレーズをスタッフ全員が共有しておくと、追加注文を促しやすくなります。

商品知識の向上

スタッフが商品の特徴やおすすめポイントをしっかり理解しておくと、自信を持っておすすめでき、説得力も増します。盛り付けや調理方法、食材の産地なども伝えられるとお客様の満足度がアップしやすいです。

ちょっとしたおまけや一言の声がけ

帰り際にミニデザートをサービスしたり、次回来店時に使える小さなクーポンを渡したりすることで、「また来よう」と感じてもらいやすくなります。

会員カードやポイントシステムの導入

スマートフォンのアプリや紙のスタンプカードなど、利用回数に応じた特典を設けることで、再来店を促進します。特に常連客が増えると、安定的な売上につながり、口コミ効果も期待できます。

売上アップ編〜SNSや口コミサイトの活用

見た目で勝負できる写真を意識

飲食店では「写真映え」が集客力に大きく影響します。スマートフォンで手軽に撮影しても、照明やアングルを工夫すれば魅力的な写真を撮れます。

イベントやキャンペーン情報の告知

季節限定メニューや期間限定サービスなど、通常とは違うイベントをこまめに告知することで興味を引き付けられます。ハッシュタグや地名を活用して、多くの人の目に留まるよう工夫しましょう。

良い口コミは積極的にアピール

お客様が投稿してくれた写真や感想は、他の人にとっても「信頼できる情報」です。店内のPOPや公式SNSで紹介するなど、積極的にシェアすると効果的です。

悪い口コミは改善のチャンス

批判的な意見こそ、改善点がはっきりしています。誠意を持って対応し、具体的な改善策を打ち出すことで、お店の印象を逆に高めるチャンスにもなります。

コスト削減編〜相見積もりやまとめ買い活用

相見積もりで価格と品質を比較

複数の卸業者や市場から見積もりを取り、価格だけでなく品質や配達スケジュールの柔軟性も含めて比較検討します。少し手間がかかる分、大幅なコストダウンにつながる可能性があります。

まとめ買いで単価を下げる

長期保存が可能な調味料や常温商品などは、まとめ買いで仕入れ単価を抑える方法も有効です。ただし、在庫を抱えすぎて使い切れなくならないよう、適切な量を見極める必要があります。

コスト削減編〜 在庫管理とフードロス削減

先入れ先出しの徹底

倉庫や冷蔵庫に新しい食材を入れるとき、古い食材より奥にしまうことがないようルールを決めておきましょう。ラベルを貼って日付管理をするだけでも、廃棄リスクが大幅に減少します。

適切な仕入れ量の見極め

季節や天候、客足の傾向などを考慮し、過剰在庫を持たないように注意します。データを記録し続ければ、仕入れ量の予測精度が徐々に高まります。

廃棄記録のデータ化

エクセルやアプリで、何がどれだけ廃棄されたかを管理します。数字で可視化することで、スタッフ全員が「こんなにも捨てていたのか」と驚き、意識が変わりやすくなります。

原因分析と対策の議論

廃棄が多い食材やメニューがどれなのかを特定し、「メニューを一部変更する」「仕入れ量を減らす」など、具体策をチームで検討します。スタッフが主体的に取り組むことで、モチベーション向上にもつながります。

コスト削減編〜 シフトの適正化

データを活用したシフト組み

前述のとおり、過去の売上や予約状況、周辺イベントなどのデータを分析し、混雑が予想される日・時間帯には人員を多めに、客足が少ない時間帯には最小限に抑えるといった柔軟なシフト作成を心がけます。

スタッフの負担バランス

常に忙しい環境だと疲労や不満が溜まりやすく、離職率にも影響します。ピーク時にはしっかり人数を確保し、混雑緩和後には休憩を挟むなど、メリハリのある運営を目指しましょう。

短時間勤務でコアタイムに集中

混雑する3~4時間だけ集中的に働いてもらう短時間勤務のスタッフを採用すれば、人件費の効率化を図れます。特に学生や主婦層など、限られた時間で働きたい人とのマッチングが期待できます。

スタッフの柔軟性を向上

前述のとおり、フロア担当やキッチン担当など、固定化してしまうと急なシフト変更に対応しにくくなります。複数の業務をこなせる人材が増えれば、欠員時のカバーや繁忙期の人手不足をスムーズに解消しやすくなるでしょう。

まとめ

売上を伸ばしつつコストを適切にコントロールできれば、飲食店は厳しい状況下でも安定した利益を確保できます。

本記事で紹介した「売上 - コスト = 利益」の考え方や、客数・客単価・回転率、そして原価率や人件費率の管理などは、すべて長期的な店舗運営の土台となるものです。

小さな改善を積み重ねることで、急な原材料価格の高騰や人手不足といったリスクにも柔軟に対応しやすくなるはずです。まずは手書きノートやエクセルなど、身近な方法からデータを記録・分析してみましょう。その一歩が、大きな成長へとつながります。ぜひ、今日からできることを始めてみませんか?

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