この記事では、ベーカリー型・揚げパン専門のテイクアウト店における油煙排気の課題を、当社FUJIOHがどのように解決したかについて紹介します。
※本文中では社名は敬称略で記載しています。
営業停止の危機。駅構内で揚げパンを提供する難しさ

そこは、名古屋市内を走る鉄道の駅構内にあるテイクアウト形式の「揚げパン専門店」です。揚げパンをその場で揚げて提供するスタイルは、通勤・通学客の目を引き、駅ナカグルメとして人気を集めていました。
しかし、同店舗は営業継続に関わる重大な課題に直面しました。
厨房内、とくに揚パン焼成機周辺で発生する油煙により、壁面への油汚れが蓄積し、これが電気系統のショートを引き起こす原因となっていたのです。この状況を受け、所轄の消防署からは「改善がなければ営業停止」とする是正指導が入り、早急な対応が求められる事態となりました。
問題の根本には、駅ビルという特殊な環境があります。
テナント区画にはもともと排気ダクトが配管されておらず、一般換気用の天井換気扇のみで営業を行っていました。しかしその能力では油煙の捕集が追いつかず、厨房内に油が蓄積してしまったのです。
さらに、駅構内では建物全体の総排気量が厳密に管理されており、各テナントに割り当てられた排気量を超えるような設備の導入は不可能。外部への排気も臭気トラブルの原因となるため、従来のような排気設備による対策は非常に難しい状況でした。
排気できないなら、店内で完結する空気循環を
今回の提案が実現に向けて動き出した背景には、当社がこれまでに培ってきた技術的な知見と対応実績があります。本件のご相談は、店舗からではなく、駅ビルの管理会社であるデベロッパーより直接寄せられたものでした。施設全体の運営を担う立場から、テナント課題の解決に向けた対応策の一環として、当社にご相談いただいた形です。

この難題に対し、当社FUJIOHが持つ「室内循環仕様のクッキングオイルコレクター」(以下、COC)の技術による解決を提案しました。COCは、調理時に発生する油煙を内部で回収・ろ過し、きれいな空気として店内に戻す装置です。
最大の特長は、排気ダクトが不要であること。つまり、建物の構造や排気制限に一切影響を与えずに、油煙対策が可能になります。さらに、COCは大掛かりな工事や長期の休業を伴うことなく導入が可能。コスト面・工期面でも圧倒的な優位性を持っていました。
特注設計と現場検証で実現した“駅ナカ揚げパン”

実際の導入にあたっては、いくつかの技術的な課題がありました。まず、既存のCOCでは揚げパン専門店の調理機器(電気式揚げパン焼成機)を覆うことができず、間口寸法を拡げた特注の大型仕様を開発。さらに、背面の壁に固定できない構造だったため、両側面の壁に固定する設計としました。
当時のCOCには排気タイプしか設定がなかったため、PoC(概念実証)として室内循環仕様を新たに開発。揚げパン焼成機という特殊な調理機器から発生する油煙の捕集状況を現場でフィールドテストしながら、駅ビル管理会社であるベロッパーと地域の消防署とも連携し、設計を進めました。
こうして完成した特注COCは、消防検査も無事に通過し、営業再開を実現。導入から約6か月間にわたるプロジェクトでしたが、店舗からは「職場環境が非常に良くなった」と高い評価をいただきました。
さらに、今回の経験は製品開発にもフィードバックされ、現在では2連式・3連式といったワイド間口対応仕様や、1000mm幅の標準設定も実現しています。

今回の事例は、排気ダクトが使えないという制約の中でも、適切な技術と柔軟な対応によって課題を乗り越えられることを示しています。COCの導入によって、油煙による衛生・安全リスクを解消しただけでなく、駅構内という特殊な環境でも“揚げたて”を提供するという店舗の魅力を守ることができました。
また、室内循環仕様という新たなアプローチが、消防署からもスムーズに認可を得られたことは、今後の出店戦略においても大きな示唆となるでしょう。
FUJIOHは、これからも現場の声に耳を傾け、制約を超えるソリューションを提供し続けます。