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業務用厨房の換気量を計算する際、「換気回数・面風速・燃焼消費量のどれで出せばいいのか」「定数はいくつだったか」と、案件のたびに調べ直してはいないでしょうか。換気量計算は簡単ではありません。方法が3通りに分かれているうえに、確認を怠れば建築確認申請が通らなかったり、換気不足で現場のクレームにつながったりするおそれがあります。
本記事では、換気量の計算方法3通りと必要な定数を整理し、具体的な計算例と、求めた換気量を確保するための工夫までをまとめました。
厨房の換気量計算が必要な理由とは?
業務用厨房で換気設備を設計するうえで、換気量の計算は必須の作業です。建築基準法(第28条第3項)により、コンロなど火を使う設備や器具を置いた調理室には、技術基準に従った換気設備の設置が義務づけられているためです。
計算で必要換気量を示せなければ、以下のようなリスクがあります。
- 確認申請が通らない
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算定根拠となる計算書がなければ、建築確認申請の審査を通過できない
- 衛生環境が悪化する
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換気量が不足し、熱や水蒸気、臭気がこもって油煙が客席へ回り込む
- 光熱費がかさむ
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過剰な換気により、空調した空気を必要以上に屋外へ捨てることになる
換気量計算は、申請を通すための手続きであると同時に、衛生と運用コストの両面に関係するものです。
厨房の換気量を計算する3つの方法
業務用厨房の換気量は、性質の異なる複数の計算で換気量を出し、そのなかで最も大きい値を設計換気量として採用するのが一般的です。条件によってどの計算方法が採用されるかが変わるため、すべてを確認したうえで判断しなければなりません。

ここでは換気回数による方法、排気フードの面風速による方法、燃焼消費量による方法の3つを詳しく解説します。
換気回数による換気量計算
換気回数による計算は、厨房の容積に対して1時間当たり何回空気を入れ替えるかという考え方で換気量を求める方法です。式は次のとおりです。
風量[m³/h]=厨房面積[m²]×天井高さ[m]×換気回数[回/h]
業務用厨房での換気回数に関する実務上の目安は1時間当たり40〜50回のため、厨房の床面積と天井高さがわかれば風量が算出できます。
排気フードの面風速による換気量計算
排気フードの面風速による計算は、フードの開口面を通る空気の速さ(面風速)をもとに風量を求める方法です。式は次のとおりです。
風量[m³/h]=フード幅[m]×フード奥行[m]×面風速[m/s]×3600
面風速の目安は0.3〜0.4m/sとなります。複数のフードを設ける場合は、フードごとに計算して合算します。
燃焼消費量による換気量計算
燃焼消費量による計算は、火を使う機器が燃焼でどれだけの廃ガスを出すかを基準に換気量を求める方法です。式は次のとおりです。
必要換気量(V)[m³/h]=定数(N)×理論廃ガス量(K)×燃料消費量または発熱量(Q)
定数(N)はフードの形状によって変わります。天井の高い特殊な厨房でなければ、Ⅰ型の定数30を使うのが一般的です。
| フードの形状 | 定数(N) |
| フードなし(排気口・排気筒のみ) | 40 |
| Ⅰ型フード | 30 |
| Ⅱ型フード | 20 |


理論廃ガス量(K)は燃料の種類で決まります。
| 燃料の種類 | 理論廃ガス量K |
| 都市ガス(12A・13Aなど) | 0.93 m³/kWh |
| LPガス(プロパン主体) | 0.93 m³/kWh |
| 灯油 | 12.1 m³/kg |
燃料消費量または発熱量(Q)は、計算に使う機器ごとの値です。代表的なコンロの参考値は次のとおりです。
| ガス器具 | 都市ガス13A発熱量 | プロパンガス発熱量 |
| コンロ 1口 | 4.65 kW | 4.20 kW |
| コンロ 2口 | 7.32 kW | 6.88 kW |
| コンロ 3口 | 8.95 kW | 8.05 kW |
実際の設計では、設置する機器の仕様書に記載された発熱量や消費量を用います。
厨房の換気量計算の具体例
3つの計算で数値がどう変わるか、同じ厨房を例に計算してみましょう。厨房の条件は以下のとおりです。
- 厨房面積 :100m²、天井高さ:2.5m
- 排気フード(壁付・Ⅰ型):幅1.2m×奥行0.9m を4か所
- ガス機器:3口コンロ(都市ガス13A、8.95kW)を4台(合計発熱量35.8kW)
換気回数による計算では、換気回数を40回/hとして、100×2.5×40=10,000 m³/h となります。面風速による計算では、面風速を0.3m/sとして、1.2×0.9×0.3×3600×4=4,666 m³/h です。
燃焼消費量による計算では、Ⅰ型フードの定数30、都市ガスの理論廃ガス量0.93、合計発熱量35.8kWとして、30×0.93×35.8=999 m³/h になります。
この例では換気回数による値が最も大きいため、設計換気量は10,000 m³/h を採用します。
厨房で換気量を確保・維持する方法
計算で求めた換気量は、排気ファンの能力さえ足りていれば実現できるというものではありません。実際の厨房では、給気の取り方やフード周りの気流、給排気口の配置、ダクトの抵抗といった条件がそろって初めて、設計どおりの換気が成り立ちます。
ここでは、計算した換気量を確保し、維持するための方法を解説します。
排気量に見合った給気量を確保する
計算どおりの換気量を確保するには、排気量に見合った十分な給気量を確保することが不可欠です。給気が不足すると厨房内が過度な負圧となり、排気ファンが能力を発揮できず、設計した換気量を確保できない場合があります。
目安としては、排気量の80〜95%程度を機械給気でまかない、残りは建物の隙間や客席側から自然に流入させる設計とします。給気量を排気量で割った値が85%前後に収まるように計画すると、客席への臭気の広がりを抑えつつ、排気の効率も保ちやすくなります。
気流をコントロールし排気フードの捕集効率を高める
少ない風量でも確実に換気を成り立たせるには、厨房内の気流をコントロールして排気フードの捕集効率を高めることが重要です。立ちのぼる油煙や蒸気に逃げ道を与えなければ、換気能力を最大限に発揮できるでしょう。
効果的なのは、加熱機器の背面や側面を防熱板などの壁で局所的に囲い、煙が横へ逃げる経路をふさぐことです。これにより上昇気流がフードへまっすぐ向かいやすくなります。



併せて注意したいのが、エアコンなど空調の吹き出し位置です。
エアコンの風が加熱機器の真上に直接当たると上昇気流が乱れ、煙がフードの外へ散ってしまうため、加熱機器の気流を乱さないように計画することが大切です。
給排気口のレイアウトを設計しショートサーキットを防ぐ
厨房全体に新鮮な空気を回して換気を維持するには、給排気口のレイアウトを工夫してショートサーキットを防ぐ必要があります。ショートサーキットとは、給気口と排気口が近すぎることにより、取り入れたばかりの空気がそのまま排気口へ吸い込まれる現象です。これが生じると、風量の数字が出ていても実際の換気が滞ってしまいます。



具体的な防止方法としては、給気口と排気口を近づけず、対角線上に振り分けたり、給気は低い位置・排気は高い位置といった高低差を利用したりすることです。こうして、空気が空間全体を通ってから排出される経路をつくります。
ダクトの圧力損失を考慮した排気ファンを選定する
計算どおりの排気量を確保するには、風量の数値だけでなく、ダクトの圧力損失を見込まなければなりません。空気がダクト内を流れる際、管の壁との摩擦や方向転換によってエネルギーが失われ、流れに対するブレーキがかかるためです。



特にダクトが長い場合や曲がりが多いほどこの抵抗は大きくなるため、風量の合計値だけでファンを選定すると現場での能力不足を招きます。設計どおりの換気量を確保するには、各フードの必要風量に加えて、ダクトでの圧力損失分を見込んだうえでファンを選定することが不可欠です。
排気ダクトが引けない物件で換気量を確保する方法
テナントビルの中階や、屋外への排気経路が取りにくい区画では、そもそも排気ダクトを引けないことがあります。
こうした物件でも換気環境を整える方法があります。火を使う機器そのものを見直す方法と、屋外排気に頼らない設備を選ぶ方法です。
火気使用設備の変更
排気ダクトを引けない物件では、ガス機器を電化厨房機器(電気式加熱調理器)に変更するという方法があります。IHや電気フライヤー、電気オーブンなどに切り替えれば燃焼がなくなり、燃焼消費量を基準とした換気量を抑えられるためです。
さらに、火を使う設備がなくなれば、建築基準法にある火気使用室としての必要換気量の算定対象から外れ、設計の自由度が上がります。ただし注意したいのは、電化したからといって換気が不要になるわけではない点です。IHなど火気を使用しない電気式の加熱調理機を採用する場合でも、油煙・蒸気・熱気への対策として換気設備が必要になります。



実際の設備要件については、所轄消防署等への確認をおすすめします。
ダクトレス(循環タイプ)設備
屋外排気そのものをなくしたい場合は、ダクトレス(循環タイプ)設備の設置が有効です。油煙や臭気を捕集してろ過し、清浄にした空気を厨房内へ戻す仕組みのため、排気ダクトを屋外まで引く必要がありません。
この方法は、テナント側で大がかりな改修許可が下りにくい物件、近隣への臭気漏れを避けたい立地、工期をできるだけ短くしたい案件などに向いています。



ただし、循環タイプの設備は電気式の加熱調理器専用です。ガス機器は燃焼で二酸化炭素が発生することから屋外への排気が前提となるため、循環タイプは使用できません。
まとめ
業務用厨房の換気量は、換気回数・排気フードの面風速・燃焼消費量という3つの計算で求め、そのなかで最も大きい値を設計換気量として採用するのが一般的です。また、計算で出した値を実現するには、排気に見合った給気の確保、フード周りの気流の整え方、給排気口の配置、ダクトの圧力損失を踏まえたファン選定までを考えなければなりません。
さらに、排気ダクトが引けない物件では、火気使用設備の変更や循環タイプの採用で換気量を確保するといった工夫が必要です。
FUJIOHでは、排気ダクトを引けない物件で有効な循環タイプ(ダクトレス)の設備を展開しています。屋外排気を前提としないため、これまで排気経路の制約であきらめていた物件にも提案の幅が広がります。仕様の確認や個別の相談は、FUJIOHの業務用製品ページから資料請求・お問い合わせができますので、設計の自由度を広げる手段としてぜひご活用ください。


FUJIOH 業務用事業ソリューション推進担当 藤野 修一
飲食店・宿泊施設・食品小売など、業務厨房に関する課題解決に従事。排気・給気の設計から、循環タイプ機器の導入提案、さらに省エネや作業効率向上を目的としたレイアウト改善まで、現場に即したソリューションを提供してきた実績を持つ。メーカーや設計事務所、施工会社との協業を通じ、店舗の新規立ち上げから改修までを幅広くサポート。現在は、業務用厨房における「新しい厨房のカタチ」をテーマに、課題解決型の提案活動に取り組んでいる。





